元エントリ
私も書いてみたくなったので、以下のルールでまとめてみる。
- 「そこまで有名ではない」と私が判断した映画が中心。
- ただしそもそも私は映画に全然詳しくないので、私だけが知っている超マイナーな作品はひとつもない。映画に詳しい人なら8割〜10割見ている程度、映画をあまり見ない人でも1〜2つくらいは見たことがあるくらいのラインナップになっているはず。
- 思いついた順に書くので年代はバラバラです。
1. 血煙高田の馬場(決闘高田の馬場)(マキノ雅弘監督 / 1937年)
大好きな映画で年に一度は見る。阪東妻三郎の圧倒的な輝きをはじめ、異様な祝祭感のようなものが映画全編を彩っていて、見るたびに「幸せだなあ」と感じる。阪妻が決闘に向かって走っていくシーンはとにかくただごとではなく、いろいろな意味でいまこんなものは絶対に撮れないだろう。私が見ているのは戦後に再編集された『決闘高田の馬場』のほうかもしれない。

2.牛泥棒(ウィリアム・A・ウェルマン監督 / 1943年)
西部劇の黄金期のはじまりくらいの年代に作られたとは思えない、冤罪と正義と群集心理をテーマにした異色作品。集団心理により牛泥棒の汚名を着させられていく過程が胃がキリキリするほどのサスペンスになっていて、派手な銃の撃ち合いよりもよほど手に汗を握る。

3.失われた週末(ビリー・ワイルダー監督 / 1945年)
ワイルダーはコメディよりもノワールのほうが好みで、最高傑作はまあ『サンセット大通り』だと思うのだが、『失われた週末』のほうが好き。1945年の段階でアルコール依存症の話をこれほどの解像度で描き、息もつかせぬエンターテインメントにしているあたりがすごい。

4.エル(ルイス・ブニュエル監督 / 1952年)
『失われた週末』のアルコール依存症と同様、現代の病と思われがちなモラルハラスメントを70年前の時点で恐ろしいほどの精度で描いており、嫌な思いをしながらも目を離せずに見続けた末にあのラストに至る。優れた表現者の感性は、時代を超えて世界の真実を捉えてしまうのだ。

5.生きものの記録(黒澤明監督 / 1955年)
黒澤では『乱』と迷うがこちらをベストに挙げる。原爆への恐怖を、原爆被害ではなく原爆へのオブセッションを通じて描くという、極めて現代的な構成の作品。テーマは社会派だが、三船と志村の名演が素晴らしくエンターテインメントとしてすべてのシーンが面白い。そしてなんといっても、あの精神病院で起きる一連の出来事。

6.赤毛(岡本喜八監督 / 1969年)
岡本喜八は「日本の映画監督で一番好き」と言っていいくらいどの映画も好きなのだが、『赤毛』は中でも偏愛している映画。権力に虐げられるやるせなく煮詰まった感じが大爆発するラストは、圧巻。

7.人斬り(五社英雄監督 / 1957年)
岡本喜八と並ぶくらいに好きなのが五社英雄で、『人斬り』は緩い部分も多いのだが勝新太郎・仲代達矢・石原裕次郎に加えて三島由紀夫までもが出るというオールスターキャストで見ているだけで幸福な気持ちになってくる。

8.切腹(小林正樹監督 / 1969年)
『人斬り』とは一転して、とある武士の切腹を巡るサスペンス。静かな緊張感が全編にわたってみなぎっていて、それがクライマックスの立ち回りまで続くのがすごい。こんなチャンバラ(と言ったいいのか)は見たことがない。

9.パリ猫ディノの夜(アラン・ガニョル他監督 / 2010年)
時代劇のことばかり書いていたら、ふとアニメについて書きたくなった。本作はパリの夜にうごめくマフィアを描いたノワールに、街を徘徊する猫が絡んでくるという変わったタッチのアニメーション。インサートされるマジック・リアリズムのような演出も決まっていて、独特のチャームとクールネスがある。

10.ロング・ウェイ・ノース 地球のてっぺん(レミ・シャイエ監督 / 2016年)
海外アニメというと本作も忘れがたい。19世紀のサンクトペテルブルグに生まれた少女が北極点を目指すロードムービー。色使いとタッチが素晴らしく、過酷な物語にもかかわらずあまりの美しさに見るたびに落涙しそうになる。

11.マイマイ新子と千年の魔法(片渕須直監督 / 2009年)
この流れで日本アニメのフェイバリットも。『この世界の片隅に』が有名な片渕監督だが、私はこちらのほうが好き。少女から見える山口の防府を丁寧に描いていて、何気ないシーンまでもがみずみずしい。クライマックスの優しさは、何度見ても涙ぐんでしまう。

12.冬の小鳥(ウニー・ルコント監督 / 2009年)
韓国映画の中でも一番好きといっていいくらい好きな作品。児童養護施設で過酷な生活を送る少女の世界を、小鳥というモチーフを使って丹念に掘り下げている。素晴らしい演技を見せているのは子役時代のキム・セロンで、彼女を喪った哀しみはいまでも私の中にある。

13.味園ユニバース(山下敦弘監督 / 2015年)
山下敦弘は新作が公開されるたびに劇場に見に行く監督のひとりだが、特に偏愛しているのは本作。渋谷すばるが『古い日記』を歌い出すシーンの素晴らしさもさることながら、なんといってもステージパフォーマンスを繰り広げる赤犬が輝いている。実際の味園ユニバースは昨年閉業してしまったが、本作を見てから一度行ってとても楽しかった。フィクションは現実への扉を開いてもくれる。

14.ピープルvsジョージ・ルーカス(アレクサンドレ・O・フィリップ監督 / 2010年)
世界最大のカルトムービーである『スターウォーズ』がどのように人々や世界を変え、その影響力の余波(あるいは返り血)が創造主であるルーカスにどう及んだかを描くドキュメント。終始笑いながら見られるゴキゲンな作品だが、その『スターウォーズ』もディズニーに買われてめちゃくちゃになってしまい、本作もいま見ると、プリクエルが駄作だった件でワイワイやっていたころは牧歌的だったなと思う。ここからが本当の地獄だ。

15.荒野のストレンジャー(クリント・イーストウッド監督 / 1972年)
そういえばイーストウッドが入ってないやんということで、偏愛している『荒野のストレンジャー』を。幽霊が出てきたり、街をペンキで塗り上げたりと色々と変な作品なのだが、その後のイーストウッド的な「男性性の解体」といったテーマが、まだ慣れない手つきで作中に描かれているあたりがチャーミング。もちろんマカロニ仕込みのイーストウッドの演技は満点。

16.ケープ・フィアー(マーティン・スコセッシ監督 / 1991年)
イーストウッドを入れたのでスコセッシも入れておくかということで、『キング・オブ・コメディ』と並んで偏愛している本作を。とにかく↓のポスターがただごとではない。花火とともに異常な扮装をしたロバート・デ・ニーロが登場するシーンは、笑っていいのか怖がっていいのか、初見時にどう解釈していいのか分からないままにただただ衝撃を受けた。

17.ウィズ(シドニー・ルメット監督 / 1978年)
『オズの魔法使』ももちろん好きだが、ダイアナ・ロスとマイケル・ジャクソンの輝きがいかんなく収められた『ウィズ』は偏愛している。マイケルのカカシはベストアクトで、とにかく天使のように可愛く、彼が踊るシーンなどは見ているだけで多幸感に溢れる。映画『マイケル』でもこのあたりのことは描かれるかと思ったが、なかったので残念。

18.未知への飛行(シドニー・ルメット監督 / 1964年)
そういえばシドニー・ルメットで偏愛しているものがもうひとつあった。相互確証破壊をテーマにした映画には『博士の異常な愛情』から『のび太と海底鬼岩城』から最近の『ハウス・オブ・ダイナマイト』まで傑作が多いが、私はこれが一番好き。電話の奥から聞こえてくるあの音が、いまだに耳にこびりついている。

19.ドッグヴィル(ラース・フォン・トリアー監督 / 2004年)
美術を廃し、舞台のようなセットで映画を描くという斬新なんだか退化しているのだかよく分からないが、とにかく忘れがたい作品。作中で描かれる群集心理のおぞましさには鬼気迫るものがあるが、途中で唐突に綺麗な讃美歌が挟まれたりと、独特の美意識があるところも好きだ。

20.さらば、わが愛 覇王別姫(チェン・カイコー監督 / 1993年)
最後はオールタイムベスト、一番好きな作品を挙げておくか。少し前にリバイバル4K上映をしていて、仕事と育児の合間に毎日のように見に行って最高だった。ストーリー、美術、演技、すべてが素晴らしい。レスリー・チャンよ、永遠に。











